2026.10.27

# 共有持分

共有名義で片方死亡したときの相続登記申請書の書き方|記入例・必要書類・登録免許税を解説 

夫婦や親子、兄弟で不動産を共有名義にしている場合、その共有者の片方(一方)が亡くなると、「名義はどうすればいいのか」「相続登記の申請書はどう書くのか」で多くの方がつまずきます。結論から言うと、亡くなった人が持っていた「持分」だけが相続の対象になり、相続登記の申請書には「所有権移転」ではなく「〇〇(被相続人の氏名)持分全部移転」と書くのが正しい書き方です。ここを間違えると法務局で補正(やり直し)を求められます。さらに2024年4月からは相続登記が義務化され、3年以内に登記しないと過料の対象になることもあります。この記事では、法務省・法務局・国税庁の一次情報をもとに、申請書の書き方・記入例・必要書類・登録免許税までを順番に解説します。

この記事の要点

  • 共有名義で片方が死亡すると、亡くなった人の「持分」だけが相続の対象になる(他の共有者の持分は影響を受けない)

  • 相続登記申請書の「登記の目的」は、「所有権移転」ではなく「〇〇持分全部移転」と書く(最も多いミス)

  • 必要書類は「法定相続どおり」「遺産分割協議」「遺言あり」の3パターンで変わる

  • 登録免許税は固定資産評価額 × 亡くなった人の持分割合 × 0.4%で計算する

  • 2024年4月から相続登記は義務化。知った日から3年以内に申請しないと、正当な理由がなければ10万円以下の過料の対象

  • 相続後も共有名義のまま放置すると権利関係が複雑になりやすい。自分の持分だけを売却して共有から抜ける選択肢もある

共有名義で片方が死亡したら、まず何が起きるのか

共有名義の不動産で片方が亡くなったとき、最初に押さえるべきは「亡くなった人の持分がどう扱われるか」です。ここを理解しておくと、申請書の書き方も自然とわかります。

亡くなった人の「持分」だけが相続の対象になる

共有名義とは、1つの不動産を複数人が「持分割合」に応じて所有している状態です。たとえば夫婦で1/2ずつ所有している自宅で夫が亡くなった場合、相続の対象になるのは夫が持っていた持分2分の1だけです。妻がもともと持っている持分2分の1は、妻自身の財産なので相続とは関係ありません。

そのため、相続登記で動かすのも「亡くなった人の持分」のみです。この「持分だけを動かす」という点が、単独所有の不動産を相続する場合との最大の違いであり、申請書の書き方にも直結します。

誰が相続するか(法定相続分の基本)

遺言がない場合、誰がどれだけ相続するかは民法が定める「法定相続分」が基準になります。配偶者と子が相続人のときは、配偶者が2分の1、子が2分の1(子が複数なら均等に分ける)です。配偶者と親(直系尊属)なら配偶者2/3・親1/3、配偶者と兄弟姉妹なら配偶者3/4・兄弟姉妹1/4となります。

ただし、これはあくまで目安です。相続人全員で遺産分割協議を行えば、法定相続分と異なる割合で分けることもできます。

参照:e-Gov法令検索 民法第900条(法定相続分)

住宅ローンが残っている場合(団信の扱い)

亡くなった方が住宅ローンの契約者で、団体信用生命保険(団信)に加入していた場合は、保険金でローンが完済されるのが一般的です。ただし、団信でローンが消えても、亡くなった方の不動産の持分は相続財産として残るため、相続登記は別途必要になります。ローンと持分は別々に扱われる、と覚えておきましょう。

共有名義でローンが夫のみのケースの詳しい扱いは、関連記事「共有名義でローンは夫のみは危険?」(#)もあわせてご覧ください。

2024年4月から相続登記は「3年以内」が義務

相続登記はこれまで任意でしたが、2024年(令和6年)4月1日から申請が義務化されました。相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があり、正当な理由なく怠った場合は10万円以下の過料が科される可能性があります。

注意したいのは、2024年4月1日より前に相続した不動産も対象になる点です。この場合は令和9年(2027年)3月31日までに相続登記をする必要があります。「昔の相続だから関係ない」とはいえません。

参照:法務省 相続登記の申請義務化に関するQ&A

相続登記申請書の書き方【記入例つき】

ここからが本題です。共有名義で片方が死亡したときの相続登記申請書の書き方を、記入例とともに解説します。

登記の目的は「所有権移転」ではなく「〇〇持分全部移転」

最も間違えやすいのが「登記の目的」の欄です。法務局の記載例は被相続人が単独で所有していたケースを想定しているため「所有権移転」となっていますが、共有名義で片方が死亡した場合は、亡くなった人の持分だけを動かすので「所有権移転」ではありません。

正しくは、

  • 登記の目的:亡 太郎 持分全部移転(「〇〇(被相続人の氏名)持分全部移転」)

と書きます。「所有権移転」と書いてしまうと、法務局で補正(やり直し)を求められます。ここが共有持分の相続登記で最も多いミスなので、必ず押さえてください。

申請書の主な記載項目

相続登記申請書は、法務局のホームページから様式をダウンロードできるほか、A4用紙に自分で作成することもできます。主な記載項目は次のとおりです。

  • 登記の目的:「〇〇持分全部移転」

  • 原因:「令和〇年〇月〇日相続」(亡くなった日=相続開始日を書く)

  • 相続人:(被相続人 〇〇〇〇)と明記したうえで、取得する相続人の住所・氏名・取得する持分を書く

  • 添付情報:登記原因証明情報・住所証明情報 など

  • 申請日・提出先の法務局

  • 課税価格:相続する持分に対応する固定資産評価額

  • 登録免許税:課税価格 × 0.4%

  • 不動産の表示:登記事項証明書(登記簿)のとおりに正確に記載する

参照:法務局 不動産登記の申請書様式について

【記入例】夫婦共有(夫1/2)の自宅で夫が死亡し、妻が相続するケース

もっとも多い「夫婦で1/2ずつ共有していた自宅で、夫が亡くなり、遺産分割協議で妻が夫の持分をすべて相続する」ケースの記入例です(氏名・地番などは例です)。

      登 記 申 請 書


登記の目的  亡 法務太郎 持分全部移転


原   因  令和7年6月20日相続


相 続 人  (被相続人 法務太郎)

       ○○市○○町三丁目45番6号

       持分2分の1 法務花子 印

       (連絡先の電話番号 000-0000-0000)


添付情報   登記原因証明情報 住所証明情報


令和7年7月1日申請 ○○法務局○○支局


課税価格   移転した持分の価格 金1,000万円


登録免許税  金4万円


不動産の表示

   所 在  ○○市○○町一丁目

   地 番  23番

   地 目  宅地

   地 積  123.45平方メートル

ポイントは、(1) 登記の目的が「亡 法務太郎 持分全部移転」であること、(2) 相続人欄に取得する持分(この例では「持分2分の1」=夫が持っていた持分全部)を書くこと、(3) 課税価格は不動産全体ではなく「移転した持分の価格」であること、の3点です。

なお、妻が相続後に単独所有になる(妻がもともと持つ1/2+夫から相続する1/2=すべて)場合でも、登記で動かすのはあくまで「夫の持分」なので、目的は「持分全部移転」です。

様式の最新ルール(2025年4月〜・2026年10月〜)

申請書の様式は近年更新されています。2025年(令和7年)4月以降の様式では、申請人(登記名義人になる人)の氏名のふりがな・生年月日などを記載する欄が追加されました(登記記録に検索用情報を登録するための申出)。

さらに2026年(令和8年)10月5日以降に申請する場合は、登記名義人となる方の国籍等を申し出る取扱いも始まっています。最新の様式・記載例は、必ず法務局のホームページで確認してから作成しましょう。

参照:法務局 不動産登記の申請書様式について

ケース別の必要書類(法定相続/遺産分割協議/遺言)

必要書類は「どうやって相続するか」で変わります。共通して必要なものと、ケースごとに追加で必要なものを整理します。

相続の方法

主な必要書類

共通(どのケースも必要)

被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍)謄本、被相続人の住民票除票(または戸籍の附票)、相続人全員の戸籍謄本、不動産を取得する相続人の住民票、固定資産評価証明書(登録免許税の計算用)、登記申請書

① 法定相続分どおりに登記する

上記の共通書類(遺産分割協議書・印鑑証明書は不要)

② 遺産分割協議で決める

共通書類+遺産分割協議書+相続人全員の印鑑証明書

③ 遺言書がある

共通書類+遺言書(自筆証書遺言は家庭裁判所の検認済みのもの、または法務局保管のもの)。遺言があれば他の相続人の戸籍・印鑑証明書は原則不要

戸籍一式の代わりに「法定相続情報一覧図の写し」を使うと、戸籍の束を何度も出さずに済み、手続きがスムーズになります。相続関係説明図を戸籍謄本などと一緒に提出すると、調査終了後に戸籍の原本を返してもらえます。

参照:法務局 不動産登記の申請書様式について

登録免許税の計算方法

相続登記には登録免許税がかかります。共有名義で片方が死亡したケースでは「亡くなった人の持分」に対して課税される点に注意が必要です。

計算式は「評価額 × 持分割合 × 0.4%」

相続による所有権(持分)の移転登記の税率は、1000分の4(0.4%)です。課税標準になるのは、市区町村が管理する固定資産課税台帳の価格(固定資産評価額。固定資産税の「課税標準額」ではなく「価格」「評価額」の欄)です。

共有名義で片方が死亡した場合は、不動産全体ではなく亡くなった人の持分相当の評価額が課税の対象です。計算式は次のとおりです。

  • 登録免許税 = 固定資産評価額 × 亡くなった人の持分割合 × 0.4%

たとえば、不動産全体の評価額が2,000万円で、夫が持っていた持分が2分の1の場合、課税価格は1,000万円(2,000万円 × 1/2)、登録免許税は4万円(1,000万円 × 0.4%)です。

端数処理のルールは、課税価格は1,000円未満を切り捨て、税額は100円未満を切り捨て、計算した税額が1,000円未満のときは1,000円とします。

参照:法務局 登録免許税の計算

土地の相続登記が免税になる場合

一定の要件を満たす土地の相続登記は、登録免許税が免税になることがあります。おもに次の2つで、いずれも令和9年(2027年)3月31日までの措置です。

  • 相続で土地を取得した人が、その土地の相続登記をしないまま亡くなった場合、その亡くなった人を名義人とするための相続登記

  • 不動産の価額が100万円以下の土地についての相続登記

対象は土地のみ(建物は対象外)です。自分のケースが該当するか不明なときは、管轄の法務局に確認しましょう。

参照:法務局 相続登記の登録免許税の免税措置について

期限内に遺産分割がまとまらないときは「相続人申告登記」

3年の期限内に遺産分割の話し合いがまとまりそうにない場合は、相続人申告登記という簡易な手続きで義務を果たすこともできます。自分が相続人であることを法務局に申し出るだけで、登録免許税もかかりません。ただし、これは義務違反を避けるための暫定的な手続きで、不動産を売却したり抵当権を設定したりするには、改めて正式な相続登記が必要です。

参照:法務省 相続登記の申請義務化に関するQ&A

【注意】共有名義のまま相続登記するとどうなる

相続登記自体は、法定相続分どおりであれば相続人の1人からでも申請できます。しかし「とりあえず法定相続分で全員の共有名義にしておく」と、将来トラブルの火種になりやすい点には注意が必要です。

共有名義の不動産は、売却や大きな変更に共有者全員の同意が必要になります。相続で共有者が増え、さらに次の相続(数次相続)が重なると、共有者がねずみ算式に増えて連絡すら取れなくなり、売るに売れない・活用できない状態に陥りがちです。固定資産税や管理の負担をめぐって、親族間の関係がこじれることも少なくありません。

こうした「共有名義が残って動かせない」状況では、自分の持分だけを売却して共有関係から抜けるという選択肢があります。共有者全員の同意がなくても、自分の持分の範囲であれば売却が可能だからです。

相続した実家の持分をめぐり兄弟の一人が売却に同意せず、話し合いが数年間止まっていた50代男性(神奈川県相模原市)のケースでは、建物の老朽化で通常の仲介では売却が難しく、固定資産税や管理をめぐるやり取りが毎年続いて精神的な負担になっていました。このケースでは、他の共有者の同意を待たずに自分の持分だけを売却する方法で、約1か月半・260万円で共有関係から抜けることができています。

※掲載の金額・期間は過去の事例であり、物件の状況・権利関係・エリア等により査定結果は異なります。

「相続はしたものの、共有名義のままでこの先どうしていいかわからない」という場合は、早めに整理の方法を検討することをおすすめします。

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よくある質問

Q. 共有名義で片方が死亡したとき、登記の目的は「所有権移転」でいいですか?

A. いいえ。亡くなった人が持っていた持分だけを動かすので、「〇〇(被相続人の氏名)持分全部移転」と書きます。「所有権移転」と書くと法務局で補正を求められます。これは共有持分の相続登記で最も多いミスです。

Q. 相続の持分を全部移転する場合、申請書にはどう書けばいいですか?

A. 「登記の目的」に「亡 〇〇(被相続人の氏名)持分全部移転」と記載し、相続人欄に取得する人の住所・氏名と、取得する持分(例:持分2分の1)を書きます。課税価格は不動産全体ではなく「移転した持分の価格」を記載します。

Q. 共有名義で片方死亡の相続登記、登録免許税はいくらですか?

A. 「固定資産評価額 × 亡くなった人の持分割合 × 0.4%」で計算します。たとえば評価額2,000万円の不動産で持分2分の1なら、課税価格1,000万円 × 0.4% = 4万円です。なお、100万円以下の土地などは令和9年3月31日まで免税になる場合があります。

Q. 遺産分割協議書は自分で作成できますか?

A. 作成できます。相続人全員で話し合って決めた内容を書面にし、相続人全員が署名・実印で押印し、全員の印鑑証明書を添付します。共有不動産を相続する場合は、誰がどの持分を取得するかを正確に記載することが重要です。内容に不安がある場合は、司法書士など専門家への相談をおすすめします。

Q. 相続登記をしないまま放置するとどうなりますか?

A. 2024年4月から相続登記は義務化されており、取得を知った日から3年以内(2024年4月より前の相続は2027年3月31日まで)に申請しないと、正当な理由がなければ10万円以下の過料の対象になります。加えて、共有名義のまま放置すると相続が重なって権利関係が複雑になり、売却や活用がますます困難になります。

Q. 相続登記は自分でできますか? 司法書士に頼むべきですか?

A. 書類をそろえて申請書を正確に作成できれば、自分で手続きすることも可能です。ただし、共有持分が絡むケースや、相続人が多い・遠方にいる・数次相続が発生しているといった場合は書類収集や判断が複雑になります。手続きに不安がある場合や、相続後に共有名義を解消したい場合は、専門家に相談すると安心です。

共有名義で片方が死亡したら、相続登記申請書は「持分全部移転」で

共有名義の不動産で片方が亡くなったときの相続登記は、ポイントを押さえれば自分でも進められます。最後に要点を振り返ります。

  • 相続の対象になるのは、亡くなった人が持っていた持分だけ

  • 申請書の「登記の目的」は「所有権移転」ではなく「〇〇持分全部移転」と書く(最頻出ミス)

  • 必要書類は「法定相続」「遺産分割協議」「遺言」の3パターンで変わる

  • 登録免許税は評価額 × 持分割合 × 0.4%。100万円以下の土地などは免税措置あり(令和9年3月31日まで)

  • 相続登記は知った日から3年以内が義務。怠ると10万円以下の過料の可能性

  • 相続後も共有名義が残ると権利関係が複雑になりやすい。自分の持分だけを売却して共有から抜ける選択肢もある

名義やローン、相続税がからむと手続きは一気に複雑になります。「相続したけれど共有名義のままで動かせない」「持分をどう整理すればいいかわからない」という場合は、まずは気軽に相談してみてください。

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担当者

株式会社CLOUD HOMe 主任

本橋 陽加里

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