2026.09.28

# 共有持分

共有持分の固定資産税は誰が払う?連帯納税義務・代表者・払わないときの対処法を解説

共有持分(共有名義)の不動産にかかる固定資産税は、「誰が」「いくら」「どうやって」払うのかがわかりにくく、共有者どうしのトラブルに発展しやすい費用です。「自分は住んでいないのに払わされる」「代表者にされて全額を立て替えている」「相手が払ってくれない」といった悩みは後を絶ちません。

この記事では、共有名義不動産の固定資産税について、地方税法や民法などの一次情報をもとに、納税義務のしくみ(連帯納税義務)、納税通知書が届く「代表者」制度、払わない共有者への対処法、共有者が亡くなったときの扱い、そして負担から根本的に解放される方法までを整理して解説します。

この記事の要点

  • 共有名義の固定資産税は、持分の割合に関係なく共有者全員が全額を納める義務がある(連帯納税義務/地方税法第10条の2第1項)

  • 納税通知書は共有1件につき1通、「代表者」あてに届く。持分ごとに分けて課税・請求することはできない

  • 共有者間の内部負担は持分割合に応じるのが原則(民法第253条第1項)。1人が立て替えたら他の共有者に請求(求償)できる

  • 共有名義にしても固定資産税の総額は安くならない

  • 負担を根本からなくすには、共有関係の解消(自分の持分だけの売却など)が有効

共有持分(共有名義)の固定資産税は誰が払う?【結論】

結論から言うと、共有名義の不動産の固定資産税は、共有者全員に納税義務があります。これは地方税法第10条の2第1項が定める「連帯納税義務」によるものです。

連帯納税義務とは(持分に関係なく全員が全額)

連帯納税義務とは、各共有者が持分の割合に関係なく、それぞれ税額の全額について納める義務を負うしくみです。たとえばAが持分10分の9、Bが持分10分の1で、固定資産税が年10万円のケースでも、AもBもそれぞれ10万円全額の納税義務を負います。そして、どちらか1人が10万円を納付すれば、残りの人の納税義務は消滅します。持分に応じて課税額を分けたり、持分ごとに別々に請求したりすることはできません。

参照:e-Gov法令検索 地方税法/高島市「共有名義の固定資産税の納税通知書は誰に送付されますか」

対外的な「全額の義務」と内部的な「持分での負担」は別

一方で、共有者どうしの内部関係では、各共有者は持分に応じて費用を負担するのが原則です(民法第253条第1項)。つまり「自治体に対しては全員が全額の義務」を負いますが、「共有者間では持分割合で負担を分け合う」という二段構えになっています。実務では、共有者の1人が代表してまとめて納付し、あとから他の共有者に負担分を請求(=求償)する形が一般的です。

参照:e-Gov法令検索 民法

納税通知書は誰に届く?共有の「代表者」制度

共有名義の固定資産税でつまずきやすいのが、納税通知書の届き方です。共有名義の不動産は、共有者が何人いても、納税通知書は1件につき1通のみ、「代表者」1名あてに送付されます。宛名は「〇〇(代表者氏名)外〇名」と表示されるのが一般的です。これは前述の連帯納税義務により、持分ごとに分けて課税・通知することができないためです。

参照:高島市「共有名義の固定資産税の納税通知書は誰に送付されますか」

代表者はどうやって決まる?

代表者は共有者間の協議で決めて自治体に届け出るのが基本ですが、届出がない場合は自治体が次のような基準で決めることが多いとされています(基準は自治体により異なります)。

  • その不動産に住んでいる方

  • 持分の割合が多い方

  • その市区町村内に住んでいる方

  • 登記簿に記載されている順序が早い方

参照:行田市「共有名義の固定資産税の納税義務者はどうなりますか」

代表者は変更できる

代表者を変更したい場合は、自治体に「固定資産税(共有)代表者指定(変更)届」などの書類を提出します。多くの自治体では、すでに課税実績がある共有の代表者を変更するには共有者全員の同意が必要とされ、変更は原則として翌年度の課税分から反映されます。

参照:久万高原町「共有名義で所有している固定資産の代表者選定基準と変更方法」

「共有名義にすると固定資産税は安くなる」は誤解

「共有名義にすると固定資産税が安くなるのでは」と考える方がいますが、これは誤解です。固定資産税は1つの不動産全体に対して課税され、共有名義にしても総額は変わりません。共有はあくまで、その総額を共有者どうしで分担するだけです。

固定資産税の計算のしくみ(税率・特例)

固定資産税は「固定資産税評価額(課税標準額)×標準税率1.4%」で計算されます。市街化区域内では、これとは別に都市計画税(税率上限0.3%)がかかる場合があります。住宅が建っている土地には「住宅用地の特例」があり、課税標準額が次のように軽減されます。この特例は不動産(物件)ごとに適用されるもので、共有かどうかで変わるものではありません。

区分

固定資産税

都市計画税

小規模住宅用地(200㎡以下の部分)

課税標準 × 1/6

課税標準 × 1/3

一般住宅用地(200㎡超の部分)

課税標準 × 1/3

課税標準 × 2/3

標準税率

1.4%

上限0.3%

参照:総務省「固定資産税の概要」/東京都主税局「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)」

免税点も物件単位

また、同一の市区町村内で同じ人が所有する土地の課税標準額の合計が30万円未満、家屋が20万円未満の場合は、固定資産税は課税されません(免税点)。この判定も物件・所有者単位で行われ、共有の持分ごとに細分化されるわけではありません。

参照:東京都主税局「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)」

共有者の1人が固定資産税を払わないとどうなる?

「固定資産税を共有者が払わない」という悩みは非常に多く聞かれます。連帯納税義務があるため、共有者の1人が自分の負担分を払わなくても、自治体はその分を他の共有者に請求できます。

具体的には、代表者や他の共有者に督促状が届き、それでも納付されなければ、財産の差押えなどの滞納処分が、実際に納めていない共有者だけでなく他の共有者に及ぶおそれもあります。「自分は使っていないから」「住んでいる人が払うべき」という言い分は、法的には通りません。

参照:e-Gov法令検索 地方税法

そのため、滞納によるペナルティ(延滞金や差押え)を避けるには、まずは他の共有者が立て替えてでも期限内に納付しておくのが安全です。立て替えた分は、次に説明する「求償権」で請求できます。

立て替えた固定資産税を取り戻す方法(求償権)

共有者の1人が固定資産税を立て替えて納付した場合、払っていない共有者に対して、その負担分の返還を求めることができます。この権利を「求償権」といいます。負担割合は、原則として各共有者の持分割合に応じて決まります。

求償権には時効がある(実務上は5年が目安)

注意したいのが、求償権には消滅時効がある点です。民法第166条第1項により、債権は「権利を行使できると知ったときから5年」または「権利を行使できるときから10年」で時効消滅します。固定資産税の立替では、立て替えたことを本人が認識しているため、実務上は「立て替えた時から5年」を目安に動くのが無難です。なお、2020年3月31日以前に立て替えた分は、旧民法により時効が10年となる場合があります。

参照:e-Gov法令検索 民法

1年以上払わないなら「持分の取得」も可能

さらに強力な手段として、民法第253条第2項があります。共有者が管理費用などの負担義務を1年以内に履行しないときは、他の共有者は相当の償金を支払って、その共有者の持分を取得することができます。長年にわたり負担に応じない共有者がいる場合に、共有関係を解消する選択肢の1つです。

参照:e-Gov法令検索 民法

請求の進め方

実務的には、①まず共有者間で負担について協議し、②応じない場合は内容証明郵便などで催告し、③それでも支払われなければ支払督促や訴訟で回収する、という流れになります。ただし、親族間の裁判は精神的な負担が大きく、弁護士費用が回収額を上回る「費用倒れ」になることもあるため、回収額と手間のバランスを見極めることが大切です。

共有者が亡くなったら固定資産税は誰が払う?(相続)

固定資産税は、毎年1月1日時点の不動産の所有者に課税されます(地方税法第343条)。共有者の1人が亡くなった場合、その人の持分と固定資産税の納税義務は、相続財産として相続人に引き継がれます。相続人が複数いれば、相続人全員が納税義務を負うことになります。

参照:e-Gov法令検索 地方税法

2024年から相続登記が義務化

2024年(令和6年)4月1日から、相続登記が義務化されました。相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があり(不動産登記法第76条の2第1項)、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象となります。施行日より前に発生した相続も対象で、令和9年(2027年)3月31日までの登記が必要です。

参照:法務省「相続登記の申請義務化について」

相続登記が終わるまでは、納税通知書が亡くなった方(旧名義人)あてに届き続けることがあります。その間は、相続人が「現所有者申告届」や「相続人代表者指定届」を自治体に提出し、いったん納付したうえで、法定相続分などに応じて相続人間で精算するのが一般的です。

亡くなった共有者に相続人がいない場合

亡くなった共有者に相続人がいないときは、その持分は他の共有者に帰属します(民法第255条)。この場合、残った共有者の持分が増える分、固定資産税の負担も増えることになります。なお、このように持分を取得した場合は、遺贈により取得したものとして相続税の課税対象になります。

参照:e-Gov法令検索 民法/国税庁「民法第255条の規定により共有持分を取得した場合の相続税の課税関係」

固定資産税の負担から根本的に解放されるには

ここまで見てきたとおり、共有名義のままでは、固定資産税は「払い続けなければならない・分担でもめやすい・相続で複雑になる」という負担がつきまといます。使っていない不動産であっても、共有している限り納税義務からは逃れられません。この負担を根本から断ち切るには、共有関係そのものを解消するのが最も確実です。

主な解消方法

  • 共有者全員で不動産全体を売却して現金化する

  • 自分の持分を他の共有者に買い取ってもらう/他の共有者の持分を買い取る

  • 話し合いがまとまらない場合は、共有物分割請求(最終的には裁判)で解消する

  • 自分の持分だけを専門業者に売却する

「自分の持分だけ」を売って解決した事例

共有者全員の同意が得られなくても、自分の持分だけを売却して固定資産税の負担から抜けることは可能です。

たとえば、相続した実家(戸建て)の持分をめぐり、兄弟の1人が売却に同意せず数年間膠着していた50代男性(神奈川県相模原市)のケースでは、毎年の固定資産税や管理をめぐる兄弟間のやり取りが精神的な負担になっていました。建物の老朽化で通常の仲介では売却が難しい状況でしたが、自分の持分のみを売却することで、約1か月半・260万円で共有関係から抜けることができました。

(※掲載の金額は過去の事例であり、物件の状況・権利関係・エリアなどにより査定結果は異なります。)

また、離婚後も元配偶者との共有名義が続いていた40代女性(埼玉県川越市・マンション)のケースでは、管理費や固定資産税の扱いが曖昧なまま放置され不安を抱えていましたが、相手と交渉することなく自分の持分だけを売却し、約3週間・180万円でスピード解決しています。

(※掲載の金額は過去の事例であり、物件の状況・権利関係・エリアなどにより査定結果は異なります。)

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よくある質問(FAQ)

Q. 共有名義の固定資産税は誰が払うのですか?

A. 共有者全員に納税義務があります(連帯納税義務)。持分の割合に関係なく、各共有者が全額を納める義務を負い、誰か1人が納付すれば他の共有者の義務は消滅します。実務では代表者がまとめて納付し、あとで持分割合に応じて精算します。

Q. 固定資産税を持分に応じて別々に払えますか?

A. できません。連帯納税義務により、持分ごとに課税額を分けたり、共有者それぞれに別々の納税通知書を出したりすることは制度上できません。納付は代表者あての1通の納付書で行い、共有者間で負担を精算します。

Q. 共有名義にすると固定資産税は安くなりますか?

A. 安くなりません。固定資産税は不動産全体に課税され、総額は共有でも単独名義でも変わりません。共有は総額を分担するだけです。

Q. 共有者が固定資産税を払わない場合、自分に請求が来ますか?

A. 来ます。連帯納税義務があるため、他の共有者が払わなくても、督促や差押えが自分に及ぶおそれがあります。まず立て替えて滞納を避け、あとから求償権で負担分を請求するのが安全です。

Q. 共有者が亡くなったら固定資産税は誰が払いますか?

A. 亡くなった共有者の持分と納税義務は相続人に引き継がれます。相続人が複数なら全員が義務を負います。2024年から相続登記は義務化されており、原則3年以内の登記が必要です。

Q. 固定資産税の代表者は変更できますか?

A. できます。自治体に代表者指定(変更)届を提出します。課税実績がある共有の場合、変更には共有者全員の同意が必要で、原則として翌年度課税分から反映されます。

共有持分の固定資産税について理解を深めよう

  • 共有名義の固定資産税は、持分に関係なく共有者全員が全額の納税義務を負う(連帯納税義務・地方税法第10条の2第1項)

  • 納税通知書は代表者1名に届き、持分ごとに分けた課税・請求はできない

  • 共有名義にしても固定資産税の総額は安くならない

  • 払わない共有者がいると自分に督促・差押えが及ぶおそれ。立替後は求償権で請求できる(時効は実務上5年が目安)

  • 共有者の死亡時は相続人に納税義務が承継。相続登記は2024年から義務化

  • 負担を根本からなくすには共有関係の解消が有効。自分の持分だけを売却するという選択肢もある

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担当者

株式会社CLOUD HOMe 主任

本橋 陽加里

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