2026.10.27

# 共有持分

共有持分のリスクとは?放置で起こる7つの危険とトラブル事例・解消法を解説

「親から相続した実家が兄弟との共有名義のまま」「離婚したのに元配偶者と家が共有のまま」、このように不動産の共有持分を持ったままにしている方は少なくありません。しかし、共有持分はそのまま持ち続けると、自分の意思だけでは売却も活用もできず、相続のたびに共有者が増え、ある日突然見知らぬ第三者と共有関係になる、といったリスクを抱えています。この記事では、共有持分にどんなリスクがあるのかを民法の条文をもとに整理したうえで、実際のトラブル事例、法改正で高まった「放置リスク」、そして今からできる解消方法までを解説します。

この記事の要点

  • 共有持分の最大のリスクは「自分ひとりの意思で不動産を動かせない」こと。全体の売却・活用には共有者全員(または過半数)の同意が必要

  • 一方で、自分の持分だけは他の共有者の同意なく第三者に売却できる。これが「見知らぬ第三者といきなり共有になる」リスクの正体

  • 相続のたびに共有者がねずみ算式に増え、時間が経つほど権利関係が複雑になり解決が難しくなる

  • 2024年の相続登記義務化と2023年の民法改正で、「とりあえず放置」のリスクはさらに大きくなった

  • リスクは「放置しないこと」で回避できる。全員での売却・持分売却・分割請求など、状況に応じた選択肢がある

そもそも共有持分とは?なぜリスクが生まれるのか

共有持分のリスクを理解するには、まず「共有持分とは何か」と「権利がどう制限されるか」を押さえる必要があります。リスクの多くは、この権利の仕組みから生まれています。

共有持分とは「1つの不動産を複数人で持つときの権利の割合」

共有持分とは、1つの不動産を複数人で共同所有する場合に、それぞれの所有者が持つ所有権の割合のことです。たとえば兄弟2人で実家を相続し、2分の1ずつで登記した場合、それぞれが「2分の1の共有持分」を持っていることになります。

民法では、持分割合について特段の定めがない場合は各共有者の持分は等しいものと推定するとされています(民法250条)。実務上は、相続分や購入時の出資割合に応じて持分割合を決めるのが一般的です。

共有が生まれる典型的なきっかけは、親の不動産を複数の相続人で相続したケースと、夫婦が資金を出し合ってマイホームを共有名義で購入したケースです。どちらも入口は自然ですが、ここからリスクが始まります。

「全体の処分は全員同意/自分の持分は単独で売れる」ねじれが根源

共有持分のリスクの根源は、権利に次のような「ねじれ」があることです。

  • 不動産"全体"を売る・大きく変更する(処分・変更行為)には、共有者全員の同意が必要です(民法251条)。1人でも反対すれば、不動産全体は動かせません。

  • 賃貸などの管理行為は、持分価格の過半数で決定します(民法252条1項)。修繕などの保存行為は各共有者が単独でできます(民法252条5項)。

  • 一方で、自分が持っている持分"だけ"なら、他の共有者の同意がなくても自由に第三者へ売却・贈与できます。所有者は自由にその所有物を処分する権利を持つと定められており(民法206条)、共有持分も所有物であるためです。

つまり「みんなで持っている不動産全体は1人では動かせないのに、自分の持分だけは1人で手放せる」という非対称が、後述する多くのトラブルを生みます。

参照:民法(e-Gov法令検索)

共有持分を持ち続ける7つのリスク

共有持分をそのまま持ち続けると、具体的には次の7つのリスクがあります。自分がどれに当てはまりそうかを確認してみてください。

リスク1:自分ひとりでは売却・活用できない

前述のとおり、不動産全体の売却や、建て替え・大規模リフォームといった変更行為には共有者全員の同意が必要です(民法251条)。自分が「売りたい」「活用したい」と思っても、他の共有者が1人でも反対すれば実現できません。使い道が決められないまま、固定資産税だけを払い続ける状態に陥りがちです。

リスク2:相続のたびに共有者がねずみ算式に増える

共有者の1人が亡くなると、その持分はさらにその相続人へと引き継がれます。これを繰り返すと、当初は兄弟2〜3人だった共有者が、いとこや甥・姪まで含めて十数人に膨れ上がることも珍しくありません。共有者が増えるほど全員の合意形成は難しくなり、「誰が共有者かすら把握できない」状態になっていきます。時間の経過そのものがリスクを大きくするのが、共有持分の怖さです。

リスク3:見知らぬ第三者と突然共有になる

リスクの根源で触れたとおり、各共有者は自分の持分を他の共有者の同意なく第三者に売却できます(民法206条)。つまり、他の共有者が自分の持分を共有持分の買取業者などに売ってしまうと、ある日突然、会ったこともない第三者が共有者になるという事態が起こり得ます。その相手から持分の買い取りや、賃料相当額の支払い、共有物分割請求を求められるなど、トラブルに発展するケースがあります。

リスク4:固定資産税・管理費の負担をめぐる揉め事

共有不動産の固定資産税は、共有者全員が連帯して納税義務を負います。実際には代表者がまとめて支払い、他の共有者に求償する運用が多いのですが、「使っていないのに払いたくない」「誰も払わない」といった負担をめぐる揉め事が起きやすいポイントです。管理費や修繕費も同様で、誰も積極的に負担しないまま建物が傷んでいくこともあります。

リスク5:共有物分割請求で競売になる可能性

共有者は、いつでも共有状態の解消(共有物の分割)を他の共有者に請求できます。協議がまとまらない場合は、裁判所に共有物分割請求訴訟を起こすことができ(民法256条)、裁判所の判断で不動産の競売(換価分割)や、一方が他方に代金を払って単独所有とする全面的価格賠償といった形で、共有関係が強制的に解消されることがあります(民法258条)。競売になれば、市場価格より低い金額で手放さざるを得ないおそれがあります。

リスク6:共有者の認知症・行方不明で手続きが凍結する

共有者の1人が認知症などで判断能力を失うと、そのままでは売却などの意思表示ができず、成年後見制度を利用しなければ手続きが進められなくなります。また、共有者が行方不明・連絡不能になると、全員同意が前提の手続きが止まってしまいます。こうした場合、不在者財産管理人の選任や、後述する所在等不明共有者に関する制度を使うことになり、時間も費用もかかります。

リスク7:放置による資産価値の下落・空き家化

誰も住まず、誰も活用方針を決められない共有不動産は、管理が行き届かずに老朽化が進みます。空き家のまま放置されれば資産価値は下がり、周囲への悪影響から特定空家等に指定され、固定資産税の優遇が外れるリスクもあります。「いつか考えればいい」と放置することが、結果的に最もコストの高い選択になりがちです。

実際に起きた共有持分のトラブル事例

リスクは抽象論だけではイメージしづらいものです。ここでは、共有持分の相談窓口「持分ガイド」に寄せられた実際の解決事例を紹介します。

相続した実家の持分をめぐって兄弟間で意見が合わず、数年間話し合いが止まっていた50代男性(神奈川県相模原市)のケースでは、兄弟の1人が売却に同意せず、戸建ての老朽化も進んでいました。通常の仲介では売却が難しいと言われ、固定資産税や管理をめぐる兄弟間のやり取りが毎年続き、精神的な負担にもなっていたそうです。

このケースでは、共有者全員の同意を待つのではなく、自分の共有持分だけを専門の買取業者に売却するという方法で解決に至りました。結果として、約1か月半・260万円で共有関係から抜けることができています。相続によって生まれた共有名義の不動産は全国に非常に多く、共有者間の意見の食い違いから身動きが取れなくなっているケースが後を絶ちません。

※掲載の金額・期間は過去の事例であり、物件の状況・権利関係・エリア等により査定結果は異なります。

2つの法改正で「放置リスク」はさらに高まった

近年の法改正により、共有持分を「とりあえず放置」しておくリスクは、以前よりも大きくなっています。代表的な2つを押さえておきましょう。

2024年4月から相続登記が義務化された

2024年(令和6年)4月1日から、相続登記の申請が義務化されました。相続(遺言を含む)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記を申請しなければならず、正当な理由がないのに怠った場合は10万円以下の過料が科されることがあります。

この義務化は、施行日より前に発生した相続にもさかのぼって適用されます。2024年4月1日より前に相続した未登記の不動産については、令和9年(2027年)3月31日までに相続登記をする必要があります。「共有名義のまま、登記もしないで放置」という状態は、過料のリスクを抱えることになります。

参照:法務省 相続登記の申請義務化について

2023年4月の民法改正で共有ルールが見直された

2023年(令和5年)4月1日に施行された改正民法では、所有者不明土地問題を背景に、共有に関するルールが見直されました。たとえば、共有物の形状・効用を著しく変えない「軽微な変更」は持分価格の過半数で決められるようになり(民法251条・252条)、必要な調査を尽くしても所在が分からない共有者(所在等不明共有者)がいる場合に、裁判所の決定を得てその持分を取得する制度なども設けられました(民法262条の2)。

これらは共有の「出口」を広げる改正ですが、裁判所の手続きには時間も費用もかかります。制度ができたからといって放置してよいわけではなく、共有者と連絡が取れるうちに整理しておくほうが、手間もコストも小さく済みます。

共有持分のリスクを解消する方法

共有持分のリスクは、「放置しないこと」で回避・軽減できます。状況に応じて、主に次のような選択肢があります。

  • 共有者全員で不動産全体を売却する:全員の同意が得られるなら、市場価格で売却して代金を持分割合で分けるのが最もシンプルです。

  • 他の共有者に持分を売る/買い取る:共有者の誰か1人に持分を集約して単独名義にする方法です。

  • 自分の持分だけを売却する:他の共有者の同意が得られない場合でも、自分の持分だけなら第三者(専門の買取業者など)に売却して共有関係から抜けられます(民法206条)。

  • 共有物分割請求をする:話し合いで解決しない場合、裁判所に分割を請求する方法です。ただし競売などになるリスクもあるため、最終手段と位置づけられます。

  • 持分を放棄する:共有者の1人が持分を放棄すると、その持分は他の共有者に帰属します(民法255条)。ただし税務面などの注意点があります。

どの方法が適しているかは、共有者との関係・物件の状況・急ぎ具合によって変わります。特に「共有者と話し合えない」「相手と交渉したくない」という場合は、自分の持分だけを売却する方法が現実的な選択肢になります。

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よくある質問

Q. 共有リスクとは何ですか?

A. 共有リスクとは、不動産を複数人で共有していることで生じる不利益の総称です。具体的には、自分ひとりでは売却・活用できない、相続で共有者が増える、見知らぬ第三者と共有になる、固定資産税の負担で揉める、共有物分割請求で競売になる、などが挙げられます。共有している期間が長いほどリスクは大きくなる傾向があります。

Q. 共有持分を売却するとトラブルになりますか?

A. 自分の持分を売却すること自体は、他の共有者の同意がなくても法律上可能です(民法206条)。ただし、他の共有者に無断で売却すると関係が悪化したり、買い取った第三者と残りの共有者との間で新たな交渉やトラブルが生じたりすることがあります。できる範囲で事前に共有者へ説明する、トラブル対応の実績がある業者を選ぶ、といった配慮でリスクを抑えられます。

Q. 共有者が持分を放棄するとどうなりますか?

A. 共有者の1人が持分を放棄すると、その持分は他の共有者に、持分割合に応じて帰属します(民法255条)。ただし、放棄によって持分を取得した側には贈与税がかかる場合があり、持分移転の登記手続きも必要です。放棄は「ただで手放せる」とは限らないため、税務・登記の確認をおすすめします。

Q. 共有持分を買取業者に買い取ってもらうメリットは何ですか?

A. 最大のメリットは、他の共有者の同意や交渉を待たずに、自分の持分だけを現金化して共有関係から抜けられることです。共有者と連絡が取れない、関係が悪化している、話し合いが膠着している、といった場合でも手続きを進められます。一方で、持分のみの売却は市場価格より価格が下がる傾向があるため、複数社の査定で相場を確認することが大切です。

Q. 共有持分を放置するとどうなりますか?

A. 放置している間に共有者が亡くなると相続で共有者が増え、権利関係がさらに複雑になります。2024年4月からは相続登記が義務化され、取得を知った日から3年以内に登記しないと10万円以下の過料の対象になる場合があります。また、管理されない不動産は老朽化・空き家化で価値が下がります。放置は最もリスクの高い選択といえます。

共有持分のリスクは「放置しないこと」で回避できる

共有持分には、自分ひとりで動かせない、相続で共有者が増える、見知らぬ第三者と共有になる、といった固有のリスクがあります。最後に要点を振り返ります。

  • 不動産全体の処分には共有者全員の同意が必要だが、自分の持分だけは単独で売却できる

  • 相続のたびに共有者が増え、放置するほど解決は難しくなる

  • 2024年の相続登記義務化(3年以内・10万円以下の過料)、2023年の民法改正で放置リスクは上昇

  • リスクは、全員での売却・持分売却・分割請求など、状況に応じた方法で解消できる

共有持分は、時間が経つほど関係者が増え、解決が難しくなる資産です。「いつか考えよう」と先送りせず、共有者と連絡が取れるうちに整理の方針を決めておくことが、結果的に時間もコストも抑えることにつながります。共有名義や相続・離婚がからんで動かせなくなった不動産についても、まずは気軽に相談してみましょう。

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担当者

株式会社CLOUD HOMe 主任

本橋 陽加里

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