2026.10.27

# 共有持分

共有持分の使用貸借とは?成立要件・解除・トラブルと解消法をわかりやすく解説 

「共有名義の実家に、兄弟の一人が家賃を払わず無償で住み続けている」「亡くなった親から無償で借りていた土地を、他の共有者から明け渡すよう求められた」。共有持分をめぐる"無償での貸し借り"=使用貸借は、共有者どうしのトラブルに発展しやすいテーマです。賃貸借(有償)と違って法律上の保護が弱く、放置するほど権利関係が複雑になります。この記事では、共有持分の使用貸借とは何かという基本から、成立要件・終了や解除のしかた・相続時の扱い・起こりやすいトラブルと解消法までを、民法の条文を根拠に整理して解説します。

この記事の要点

  • 使用貸借とは「無償」で物を貸し借りする契約のこと。賃料を払う賃貸借とは別物で、借地借家法のような借主を守る特別な保護がない(民法593条)

  • 共有不動産では「共有者の一人が無償で使う」「共有者が第三者に無償で貸す」という2つの場面で問題になりやすい

  • 使用貸借は原則として対抗力がないため、貸主(共有者)が持分を第三者に売却すると、借主はその第三者に「無償で使える」と主張できないのが原則

  • 使用貸借は、期間満了・目的の終了・借主の死亡などで終了する(民法597条)。貸主が死亡しても終了せず、貸主の地位は相続される

  • 無償で貸しているため、原則として賃料(使用料)は請求しにくい。放置すると固定資産税などの負担だけが共有者に残り続ける

  • トラブルが動かないときは、話し合い・共有物分割請求のほか、自分の共有持分だけを売却して共有関係から抜けるという選択肢がある

共有持分の使用貸借とは

使用貸借は「無償」で貸し借りする契約

使用貸借とは、当事者の一方(貸主)がある物を引き渡すことを約束し、相手方(借主)がその物を無償で使用・収益し、契約が終了したときに返還することを約束する契約です(民法593条)。ポイントは「タダで貸す」ことにあり、賃料を支払う賃貸借とは明確に区別されます。

親の土地に子が無償で家を建てる、親名義の家に子世帯が家賃を払わず住む、といった親族間の貸し借りが典型例です。借主は、契約や目的物の性質によって定まった用法に従って使用しなければならず(用法遵守義務)、貸主の承諾がなければ第三者に使わせることはできません(民法594条)。また、借りている物の通常の必要費(固定資産税など)は借主が負担するのが原則です(民法595条)。

参照:e-Gov法令検索 民法

使用貸借と賃貸借の違い

無償か有償かという違いは、借主がどれだけ強く守られるかに直結します。主な違いは次のとおりです。

項目

使用貸借

賃貸借

対価

無償

有償(賃料あり)

借主の保護

弱い(借地借家法の適用なし)

強い(借地借家法で保護)

対抗力

原則なし

登記や建物所有などで取得できる

借主の死亡

原則として契約終了

相続人が賃借権を承継

第三者への貸与

貸主の承諾が必要

貸主の承諾が必要

最大の違いは第三者への対抗力です。賃貸借であれば、建物の賃借人は引渡しを受けていれば、土地の賃借人は借地上の建物を登記していれば、物件が売却されても新しい所有者に賃借権を主張できます(借地借家法による保護)。一方、使用貸借にはこうした特別な保護がなく、原則として第三者に対抗できません。

参照:e-Gov法令検索 民法 / 借地借家法

共有持分で使用貸借が問題になる2つの場面

共有不動産では、使用貸借は次の2つの場面で表面化します。

  1. 共有者の一人が共有物を無償で使っている:相続した実家に兄弟の一人だけが住み続けている、といったケース。他の共有者との間に黙示の使用貸借が成立していると評価されることがあります。

  2. 共有者が第三者に無償で貸している:共有者の一人が、共有者でない親族や知人に無償で使わせているケース。他の共有者の同意の有無が問題になります。

とくに相続では、被相続人の許諾を得て生前から同居していた相続人がいる場合、相続開始時から遺産分割時までの間、建物について使用貸借契約の成立が推認されるとした最高裁判例(最判平成8年12月17日)もあり、「気づかないうちに使用貸借状態になっていた」ということが起こり得ます。

参照:裁判所 裁判例結果詳細(最判平成8年12月17日)

共有持分の使用貸借が成立する要件

口約束・契約書なしでも成立する

使用貸借は、当事者の合意だけで成立する契約(諾成契約)であり、契約書の作成は成立の条件ではありません。口約束や、はっきりした取り決めがない黙示の合意でも成立し得ます。だからこそ、「無償で使わせていたつもりはないのに使用貸借と評価された」「逆に、好意で住まわせていただけなのに権利として主張された」といった食い違いが生まれやすいのです。

後々のトラブルを避けるには、無償で貸す場合でも、期間・目的・終了の条件を書面(使用貸借契約書)に残しておくことが望ましいといえます。

共有物を貸すときに必要な同意の範囲

共有物を使用・収益させる行為には、他の共有者の同意が必要です。どの程度の同意が必要かは、その行為が「管理」にあたるか「変更(処分)」にあたるかで変わります。

2023年(令和5年)4月1日に施行された改正民法では、このルールが整理されました。共有物の管理に関する事項は、各共有者の持分の価格の過半数で決するのが原則です(民法252条1項)。さらに、一定の短い期間を超えない賃借権などの設定は、管理行為として持分の過半数で行えることが明確化されました(土地は5年、建物は3年など。民法252条4項)。一方、共有物に著しい変更を加える行為や長期の権利設定は、共有者全員の同意が必要です(民法251条1項)。

ただし、無償の使用貸借を設定・解除する行為が「管理」と「変更」のどちらにあたるかについては、専門家の間でも見解が分かれる論点があります。実際に共有物の貸し借りを設定・解消する際は、個別の事情に応じて専門家に確認するのが安全です。

参照:法務省 民法等一部改正法・相続土地国庫帰属法の概要 / e-Gov法令検索 民法

使用貸借が終了・解除できるケース

共有持分の使用貸借をめぐるトラブルで最も多いのが、「無償で貸したものを返してもらえない」という問題です。使用貸借がどのような場合に終了・解除できるかを、民法の条文で確認しておきましょう。

期間・目的の満了や借主の死亡で終了する

使用貸借は、次の場合に終了します(民法597条)。

  • 期間を定めたとき:その期間が満了することで終了する

  • 期間を定めず、使用・収益の目的を定めたとき:借主がその目的に従って使用・収益を終えることで終了する

  • 借主が死亡したとき:使用貸借は終了する

とくに「借主の死亡によって終了する」という点は重要です。賃貸借では賃借人が亡くなると相続人が賃借権を引き継ぎますが、使用貸借は借主個人への好意にもとづくものと考えられるため、原則として相続されず、借主の死亡で終了します。

貸主・借主からの解除

さらに、次の場合には契約を解除できます(民法598条)。

  • 期間を定めず目的を定めた場合に、目的に従って使用・収益するのに足りる期間が経過したとき → 貸主から解除できる

  • 期間も目的も定めなかったとき → 貸主はいつでも解除できる

  • 借主は、いつでも解除できる

つまり、「期限も使い道も特に決めずに無償で貸した」ケースでは、貸主はいつでも返還を求められるのが原則です。また、共有物を使用している共有者に対しては、改正民法により、持分の価格の過半数の同意があれば明渡しを求められるようになりました(民法252条1項)。

参照:e-Gov法令検索 民法 / 法務省 民法等一部改正法・相続土地国庫帰属法の概要

持分を売却すると使用貸借は対抗されない

見落とされがちですが、貸主(共有者)が自分の持分を第三者に売却した場合、借主はその新しい所有者に対して「無償で使える」と対抗できないのが原則です。使用貸借には賃貸借のような借地借家法上の保護がないためです。

これは、共有関係から抜け出したい共有者にとって重要なポイントです。話し合いで明渡しに応じてもらえなくても、自分の持分を売却すること自体は共有者全員の同意なしにできるため、「使用貸借を理由に身動きが取れない」状態を解消する手段になり得ます。

参照:e-Gov法令検索 民法 / 借地借家法

共有持分の使用貸借で起こりやすいトラブル

無償という性質上、使用貸借は次のようなトラブルにつながりやすい特徴があります。

  • 賃料(使用料)を請求しにくい:使用貸借と認められると無償が前提のため、貸している共有者は借主から賃料を取りにくくなります。ただし、共有者間で貸し借りの合意がなく一方的に独占されている場合は、他の共有者は使用の対価の償還を求められることがあります(民法249条2項)。

  • 借主の相続人が居座る:借主が亡くなると使用貸借は原則終了しますが、相続人がそのまま住み続け、「使う権利がある」と主張して退去しないケースがあります。

  • 第三者が住んでいる:共有者の一人が、他の共有者に無断で親族や知人に無償で使わせており、他の共有者が知らない人に明渡しを求めなければならないケースがあります。

  • 固定資産税は共有者が負担し続ける:無償で貸している間も、固定資産税の納税義務は所有者(共有者)側に残ります。借主が使っているのに税負担だけが共有者にのしかかる状態になりがちです。

共有名義不動産の家賃・使用料の請求については、関連記事でも詳しく解説しています。

記事内部リンク予定

参照:e-Gov法令検索 民法

使用貸借を放置するリスク

「もめたくないから」と使用貸借状態を放置すると、次のようなリスクが膨らみます。

  • 維持費の負担が続く:固定資産税・都市計画税・管理費などの維持費は、無償で貸している間も共有者側に発生し続けます。使っていない不動産のために払い続ける構図になります。

  • 権利関係が複雑になる:共有者や借主に相続が重なると、関係者がねずみ算式に増え、話し合いがいっそう難しくなります。

  • 時効取得が主張される心配:使用貸借の借主は「所有の意思のない占有(他主占有)」なので、原則として時効取得(取得時効)は成立しません。ただし、契約の有無や内容が曖昧なまま長期間占有が続くと、「所有の意思があった」と争われ、紛争が複雑になるおそれがあります。契約関係をはっきりさせておくことが予防になります。

参照:e-Gov法令検索 民法

相続が発生したときの使用貸借の扱い

使用貸借の当事者が亡くなった場合、借主側と貸主側で扱いが異なります。

  • 借主が死亡した場合:使用貸借は原則として終了します(民法597条3項)。借主の相続人は、使用貸借の権利(使用借権)を当然には引き継ぎません。ただし、建物所有を目的とする土地の使用貸借など、借主の死亡では終了しないと解されるケースもあります。

  • 貸主が死亡した場合:使用貸借は終了せず、貸主としての地位(貸している側の立場)が相続人に引き継がれます。相続人は、引き続き使用貸借の貸主として扱われます。

相続で共有持分を取得した場合は、相続登記が必要です。相続登記は2024年(令和6年)4月1日から義務化されており、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請しないと、正当な理由がない場合は10万円以下の過料の対象になります。

参照:e-Gov法令検索 民法 / 法務省 不動産を相続した方へ~相続登記・遺産分割を進めましょう~

共有持分の使用貸借トラブルの解消法

共有持分の使用貸借をめぐる問題を解消するには、大きく3つの方向があります。状況が軽いものから順に整理します。

① 話し合いで契約内容を明確にする

まずは共有者・借主間で話し合い、使用の条件(期間・目的・終了時の扱い・費用負担)を書面で明確にすることです。無償を続けるにしても、固定資産税の負担や将来の返還について取り決めておけば、後のトラブルを大きく減らせます。

② 共有物分割請求で共有関係を解消する

話し合いがまとまらない場合、共有物分割請求によって共有関係そのものを解消する方法があります。共有者間の協議が不調なら、最終的に裁判所に共有物分割請求訴訟を提起できます。ただし、時間と費用がかかり、関係が悪化している相手との手続きは負担が大きいのが実情です。共有物分割請求の流れは関連記事で解説しています。

③ 自分の共有持分だけを売却する

相手が明渡しや話し合いに応じず、分割手続きも進まないときは、自分の共有持分だけを専門の買取業者に売却するという選択肢があります。共有持分の売却は、共有者全員の同意がなくても、自分の持分の範囲であれば可能です。使用貸借を理由に「動かせない」と思われていた不動産でも、相手方と交渉せずに共有関係から抜ける手段になり得ます。

事例:相続した実家に兄弟が住み、数年膠着していたケース(50代男性・神奈川県相模原市)

相続した実家の持分をめぐり、兄弟の一人が売却に同意せず話し合いが数年間止まっていた50代男性(神奈川県相模原市)のケースでは、建物の老朽化も進み、通常の仲介では売却が難しいと言われていました。固定資産税や管理をめぐる兄弟間のやり取りが毎年続き、精神的な負担にもなっていたそうです。

このケースでは、共有者全員の同意を待たずに、自分の持分だけを売却する方法で解決に至りました。価格の根拠を丁寧に説明したうえで納得して判断してもらうことを重視し、結果として約1か月半・260万円で持分を手放すことができています。

※掲載の金額・期間は過去の事例であり、物件の状況・権利関係・エリア等により査定結果は異なります。

連絡の取れない共有者がいて話し合い自体が始められないケース(60代男性・千葉県松戸市/古家付き土地・約2か月・120万円)でも、弁護士を通じた手続きに進む前に、まず「持分売却として整理できないか」を検討することで、時間とコストを抑えられることがあります。

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よくある質問

Q. 共有持分の使用貸借とは何ですか?

A. 共有不動産を無償で貸し借りしている状態のことです。共有者の一人が無償で住んでいる場合や、共有者が第三者に無償で使わせている場合などが当てはまります。賃料を払う賃貸借と違い、借地借家法のような借主を守る特別な保護がないのが特徴です(民法593条)。

Q. 使用貸借と賃貸借はどう違いますか?

A. 最大の違いは「無償か有償か」と「借主の保護の強さ」です。賃貸借は賃料を払う代わりに借地借家法で手厚く保護され、物件が売却されても賃借権を主張できます。使用貸借は無償で、こうした保護がなく、原則として第三者に対抗できません。

Q. 共有持分を無償で貸している場合、賃料は請求できますか?

A. 使用貸借と認められると無償が前提のため、原則として賃料は請求しにくくなります。ただし、共有者間で貸し借りの合意がなく一方的に独占されている場合は、他の共有者が使用の対価の償還を求められることがあります(民法249条2項)。

Q. 使用貸借は解除・解消できますか?

A. できる場合があります。期間を定めず目的も定めていなければ貸主はいつでも解除でき、目的を定めた場合も使用・収益に足りる期間が経過すれば解除できます(民法598条)。また、共有物を使用している共有者に対しては、持分の価格の過半数の同意で明渡しを求められます(民法252条1項)。

Q. 使用貸借で借りている人が亡くなったら契約はどうなりますか?

A. 使用貸借は、原則として借主の死亡によって終了します(民法597条3項)。相続人は使用貸借の権利を当然には引き継ぎません。一方、貸主が亡くなった場合は終了せず、貸主の地位が相続人に引き継がれます。

Q. 共有者が使用貸借で居座っていて話し合いが進みません。どうすればいいですか?

A. 話し合いや共有物分割請求のほか、自分の共有持分だけを専門の買取業者に売却する方法があります。持分の売却は共有者全員の同意がなくても自分の持分の範囲で可能なため、相手と交渉せずに共有関係から抜ける手段になり得ます。

まとめ:共有持分の使用貸借は放置せず早めに整理しよう

共有持分の使用貸借は「無償で貸し借りする」という性質から、賃料を取りにくく、借主の保護も弱く、放置するほど負担と権利関係が複雑になりやすいテーマです。最後に要点を振り返ります。

  • 使用貸借は無償の貸し借り。借地借家法のような特別な保護がなく、原則として第三者に対抗できない(民法593条)

  • 共有物を貸すときの同意の範囲は、管理か変更かで変わる。短期の権利設定は持分の過半数で可能になった(民法251条・252条)

  • 使用貸借は期間満了・目的終了・借主の死亡で終了する。貸主の死亡では終了せず相続される(民法597条)

  • 無償のため賃料は請求しにくく、固定資産税などの負担だけが共有者に残りやすい

  • 動かせないときは、話し合い・共有物分割請求・自分の持分の売却という選択肢がある

名義や貸し借りの整理は、民法・相続・税が複雑にからむため、早めに専門家へ相談するのが安全です。使用貸借がからんで動かせなくなった共有不動産についても、まずは気軽に相談してみましょう。

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担当者

株式会社CLOUD HOMe 主任

本橋 陽加里

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