2026.07.24
# 共有持分
共有持分の放棄は早い者勝ち?手続きの流れやメリットを詳しく解説!
共有持分の放棄とは、自分が持つ共有不動産の権利を手放す手続きです。本記事では、共有持分放棄の基本、相続放棄との違い、早い者勝ちと言われる理由、メリット・デメリット、費用、手続きの流れ、放棄以外に共有状態を解消する方法まで解説します。
共有持分の放棄とは?

共有持分の放棄とは、共有不動産に対して自分が持っている共有持分を手放すことです。共有持分を放棄すると、その持分は原則として他の共有者に帰属するため、放棄した人は共有者ではなくなります。
相続した実家を利用する予定がない場合や、共有者との関係が悪化している場合など、共有状態を解消したいときの選択肢の1つとして利用されています。しかし、共有持分は一度放棄すると原則として持分を取り戻すことはできません。そのため、慎重に判断することが大切です。
民法上における共有持分の放棄の扱い
民法第255条では、共有者の一人が持分を放棄した場合、その持分は他の共有者に持分割合に応じて帰属すると定められています。つまり、共有持分を放棄しても国や自治体へ移転するわけではなく、残りの共有者が新たな持分割合で不動産を所有することになります。
例えば、3人で3分の1ずつ共有している不動産で1人が持分を放棄したとしましょう。すると、残る2人がそれぞれ2分の1ずつの持分を取得します。放棄後は持分移転登記を行うことで、登記上の権利関係も変更されます。
共有持分放棄と相続放棄の違い
共有持分放棄と相続放棄は、似ていますが全く異なる制度です。
共有持分放棄は、すでに所有している共有持分だけを手放す手続きであり、他の財産には影響しません。一方で、相続放棄は家庭裁判所で手続きを行い、被相続人の財産や債務を一切相続しない制度です。
また、共有持分の放棄には法律上の「申述期限」という概念は存在しませんが、相続放棄は原則として自己のために相続が開始したことを知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申述しなければなりません。制度の目的や手続きが異なるため、混同しないように注意しましょう。
共有持分の放棄が早い者勝ちと言われる理由
共有持分の放棄が「早い者勝ち」と言われるのは、放棄された持分が残りの共有者へ帰属し、最後に残った1人は民法第255条による共有持分の放棄ができなくなるためです。管理費や固定資産税などの負担を避けるために共有者が次々と持分を放棄すると、最後に残った共有者へ不動産の所有権と負担が集中する可能性があります。
しかし、共有持分の放棄は今後の権利を手放す重要な手続きです。単に「早い者勝ちだから」という理由だけで判断するのではなく、自身の状況や他の共有者との関係を踏まえたうえで検討することが大切です。
共有持分の放棄を検討するべきケース

共有持分の放棄は、共有不動産に関する負担やトラブルから離れるための方法の1つです。しかし、放棄すると原則として持分を取り戻すことはできないため、よく考えた上で行動する必要があります。ここでは、共有持分の放棄を検討することが多い代表的なケースを紹介します。
共有不動産を今後利用する予定がない
相続した実家や遠方の土地など、今後利用する予定がない不動産を共有している場合は、共有持分の放棄を検討するケースが多いです。利用予定がないにもかかわらず共有者であり続けると、不動産に関する連絡や各種手続きへの対応も必要です。
共有状態を解消する方法の1つとして放棄を選択するのは珍しくないといえるでしょう。
固定資産税や維持費の負担が重くなっている
共有不動産を所有していると、固定資産税や修繕費、管理費などの負担が継続的に発生することがあります。
不動産から十分な利益を得られない一方で、維持費だけを負担し続ける状況では、経済的な負担が大きくなりがちです。今後も所有するメリットが少ない場合は、共有持分の放棄を検討するきっかけとなるでしょう。
しかし、放棄前に発生した管理費や修繕費などの支払義務がなくなるわけではありません。また、固定資産税は毎年1月1日時点の所有者に課税されるため、年の途中で放棄しても、その年度分の納税義務は原則として残ります。
他の共有者との関係が悪化している
共有不動産は、管理や活用、売却などについて共有者同士で協力する場面があります。しかし、意見の対立や連絡不足などから関係が悪化すると、話し合いが円滑に進まなくなることも少なくありません。
共有関係を維持すること自体が大きな負担になっている場合にも、放棄は検討されやすいです。しかし、放棄以外にも共有状態を解消する方法があるため、自分に適した方法かどうかを比較して判断することが重要です。
共有持分の放棄をしない方が良いケース

共有持分の放棄は有効な選択肢となる場合がありますが、すべてのケースで適しているわけではありません。共有持分に資産価値がある場合や、別の方法で問題を解決できる場合は、放棄以外の選択肢も視野に入れておきましょう。
共有持分に十分な資産価値がある
共有持分に資産価値がある場合は、安易に放棄することはおすすめできません。例えば、立地条件が良く需要の高い不動産であれば、将来的に売却益を得られる可能性があります。一度放棄した持分は原則として取り戻せないため、資産価値を十分に確認したうえで判断しましょう。
第三者への持分売却ができる
共有持分は、自分の持分だけであれば第三者へ売却できる可能性があります。放棄すると対価を受け取ることはできませんが、売却できれば現金化できる点が大きな違いです。共有持分を専門に取り扱う不動産会社へ相談することで、売却できる可能性もあるため、まずは査定を受けることをおすすめします。
実際に、放棄せず売却を選んで現金化できたケースもあります。相続した戸建てを兄弟と共有していた50代男性(神奈川県相模原市)は、兄弟の一人が売却に同意せず数年間動けずにいましたが、自分の持分だけを売却する方法で、相談から約1か月半で解決しました。放棄では対価を受け取れませんが、このケースでは持分を手放しつつ売却代金を得られています。
▶ この事例の詳細を見る:兄弟で相続した実家の持分を約1か月半で手放せた事例
※金額・期間は過去の事例であり、物件状況・権利関係・エリア等により結果は異なります。
賃料収入や使用利益を得ている
共有不動産を賃貸して賃料収入を得ている場合や、自ら利用して利益を得ている場合は、放棄によってその利益を受けられなくなります。また、将来的に収益物件として活用する予定がある場合も、放棄によってその機会を失うだけではなく、将来の資産価値上昇の恩恵も受けられなくなります。現在だけでなく、今後の活用予定や収益性も考慮したうえで、放棄するかどうかを判断しましょう。
共有持分を放棄するメリット

共有持分を放棄すると、不動産に関する権利を手放すことになります。一方で、共有状態を解消することで、費用負担や共有者との関係に関する悩みを軽減できる場合もあります。ここでは、共有持分を放棄する主なメリットを紹介します。
売却できない共有持分を手放せる
共有持分だけでは買い手が見つかりにくく、売却が難しいケースがあります。そのような場合でも、共有持分を放棄すれば、共有不動産に関する権利を手放すことが可能です。売却が進まず長期間所有し続けるよりも、放棄によって共有状態を解消した方が負担を軽減できる場合は少なくありません。
不要な不動産を次の世代に引き継がずに済む
共有持分を所有したまま亡くなると、その持分は相続の対象となります。相続人がさらに共有者となることで、権利関係が複雑になるケースも少なくありません。利用予定がなく、今後も所有する必要性が低い不動産であれば、生前に共有持分を放棄することで、相続人へ負担を残さずに済む可能性があります。
他の共有者とのトラブルを避けやすくなる
共有不動産では、管理方法や修繕、売却などを巡って共有者同士の話し合いが必要になることがあります。共有持分を放棄すると、原則として共有者ではなくなるため、不動産に関する意思決定へ関与する必要がなくなります。共有関係が原因で生じていた負担や精神的なストレスを軽減しやすいのも放棄のメリットといえるでしょう。
共有持分を放棄するデメリット・注意点

共有持分の放棄にはメリットがある一方で、一度放棄すると元に戻すことは容易ではありません。また、手続きや他の共有者との調整が必要になる場合もあるため、放棄する前にデメリットを理解しておくことが重要です。
放棄した共有持分を取り戻すことは難しい
共有持分を放棄すると、その持分は原則として他の共有者へ帰属します。そのため、後から「やはり持分を残しておけばよかった」と思っても、放棄前の状態へ戻すことは容易ではありません。
将来的に不動産の価値が上がる可能性や、活用方法が変わる可能性も考慮したうえで、放棄をするべきか判断しましょう。
共有者への通知や登記手続きが必要になる
共有持分を放棄するには、他の共有者へ放棄の意思を伝えるだけでなく、持分移転登記の手続きも必要になります。登記を行わなければ、第三者に対して持分の移転を主張できない可能性があります。
必要書類の準備や登録免許税などの費用も発生するため、事前に手続きの流れを確認しておきましょう。
共有者が受け入れを拒否してトラブルになる可能性がある
共有持分を放棄すると、その共有持分は他の共有者へ帰属するため、結果として他の共有者の持分割合や管理責任が変わることになります。
そのため、放棄そのものに反対されたり、固定資産税や維持費の負担が増えることを理由にトラブルへ発展したりするケースもあります。手続きを円滑に進めるためにも、放棄を検討していることは事前に共有者へ説明し、十分に話し合っておくことが大切です。
共有持分の放棄にかかる費用

共有持分を放棄する際は、登記手続きや専門家への依頼に伴う費用が発生します。不動産の評価額や依頼する専門家によって金額は異なりますが、事前に必要な費用を把握しておくことで、手続きをスムーズに進めやすくなります。主な費用としては、以下のようなものがあります。
持分移転登記にかかる登録免許税
登記事項証明書や戸籍謄本などの取得費用
司法書士へ登記を依頼する場合の報酬
弁護士へ相談・依頼する場合の相談料や報酬
共有者との話し合いがまとまらず、法的な対応が必要になった場合は、弁護士費用が別途発生することもあります。また、必要書類に不備があると手続きに時間がかかることがあるため、費用だけでなく準備期間にも余裕を持って進めることが大切です。
共有持分を放棄する流れ

共有持分の放棄は、意思表示をするだけでは手続きが完了するわけではありません。他の共有者への通知や登記手続きを行うことで、正式に共有持分を移転できます。手続きを円滑に進めるためにも、事前に流れを確認しておきましょう。
1. 他の共有者へ放棄の通知を行う
まずは、他の共有者に対して共有持分を放棄する意思を伝えましょう。法律上では、放棄の意思表示は他の共有者へ到達することで効力が生じると考えられています。後日のトラブルを防ぐためにも、口頭ではなく内容証明郵便など、通知した事実が残る方法で連絡するのがおすすめです。
2. 共有持分移転登記の申請を行う
放棄の意思表示をした後は、法務局で共有持分移転登記を申請します。登記には、登記申請書や登記原因証明情報、登記識別情報などの書類が必要になります。手続きは自分で行うこともできますが、不備なく進めるためには司法書士への依頼もおすすめです。
3. 登記識別情報通知書を受け取る
登記手続きが完了すると、新たな権利者に対して登記識別情報通知書が交付されます。登記識別情報通知書は、不動産を売却したり、担保に入れたりする際に必要となる重要な書類です。紛失すると再発行できないため、受け取った後は大切に保管しておきましょう。
共有状態を解消する放棄以外の方法

共有持分の放棄は共有状態を解消する方法の1つですが、状況によっては別の方法の方が適している場合もあります。ここでは、放棄以外の共有状態を解消する方法について紹介します。
自分の持分を買取業者に売却する
共有持分だけでも、共有持分を専門に取り扱う買取業者へ売却できる場合があります。放棄とは異なり、売却代金を受け取れる点が大きなメリットです。共有者との交渉が難しい場合でも売却できる可能性があるため、まずは査定を依頼してみるのもよいでしょう。
たとえば、共有者と長年連絡が取れない古家付き土地(千葉県松戸市・60代男性)でも、共有物分割や弁護士への相談を検討したうえで、最終的に自分の持分だけを売却し、相談から約2か月で問題を前に進められました。共有者との交渉が難しい状況でも、放棄ではなく売却で解決できる場合があります。
▶ この事例の詳細を見る:連絡の取れない共有者がいる土地の持分を約2か月で売却
※金額・期間は過去の事例であり、結果は異なります。
不動産全体を売却する
共有者全員が売却に同意すれば、不動産全体を売却し、その代金を持分割合に応じて分配できます。共有状態を解消できるだけでなく、市場価格に近い金額で売却できる可能性があるため、共有者全員の意向が一致している場合には、積極的に検討するべき選択肢といえるでしょう。
他の共有者に持分を買い取ってもらう
他の共有者に持分を買い取ってもらえれば、共有状態を解消しながら対価を受け取ることができます。共有者が単独所有を希望している場合は、比較的話し合いがまとまりやすいです。価格については、不動産会社の査定結果を参考にしましょう。
他の共有持分を自分で買い取る
自分が他の共有者の持分を取得すれば、不動産を単独所有できる可能性があります。単独所有になることで、売却や活用に関する意思決定を自分で行いやすくなります。しかし、持分の購入資金が必要になるため、事前に資金計画を立てておくことが重要です。
土地の分筆を行う
土地を共有している場合は、共有者間の合意に基づいて土地を分筆し、分けた土地をそれぞれの単独所有にする方法があります。
しかし、土地を分筆しただけでは、それぞれの土地に共有状態が残ります。共有状態を解消するには、分筆に加えて、共有物分割を原因とする持分移転登記などが必要です。土地の形状や面積、法令上の制限によっては、希望どおりに分けられないこともあります。
共有持分分割訴訟を行う
共有者同士の話し合いで解決できない場合は、裁判所に共有物分割請求訴訟を提起する方法があります。裁判所では、不動産の状況や共有者の事情を踏まえて、現物分割や代償分割、換価分割などの方法が判断されます。
時間や費用がかかることもありますが、協議が進まない場合には最終的な解決手段として活用できるでしょう。
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共有持分の放棄はメリット・デメリットを理解した上で判断しよう

共有持分の放棄は、早い者勝ちと呼ばれており、利用予定のない共有不動産や、固定資産税・維持費の負担が重い不動産、共有者との関係が悪化している不動産から離れるための手段です。しかし、共有持分を放棄すると、その持分は他の共有者に移るため、共有者間でトラブルになる可能性がある点には注意しましょう。共有持分の放棄を検討している場合は、自分にとって本当に最適な方法かを判断するためにも、早めに専門家へ相談しましょう。
担当者
株式会社CLOUD HOMe 主任
本橋 陽加里
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