2026.07.23

# 共有持分

共有持分の放棄とは?早い者勝ちと言われる理由と手続き、費用を紹介

共有持分の放棄について、メリットやデメリット・早い者勝ちと言われる理由やかかる費用などを解説します。共有持分の取り扱いに迷っている方や、共有持分の放棄を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

共有持分の放棄とは?

共有持分の放棄とは、共有不動産に対して自分が持っている持分を手放すことです。共有持分を放棄すると、その持分は他の共有者に帰属します。

例えば、複数人で不動産を共有している場合、自分の持分を放棄することで、共有関係から抜けられる可能性があります。共有者との意見が合わない場合や、固定資産税・管理費などの負担を避けたい場合に、選択肢のひとつとして検討されます。

ただし、共有持分は「放棄する」と意思表示をすれば、すべての手続きが完了するわけではありません。放棄した持分を他の共有者へ移すためには、登記手続きが必要です。また、他の共有者に税金が発生する可能性もあるため、メリットだけでなくデメリットも理解した上で判断することが大切です。

共有持分の放棄を検討すべきケース

共有持分は、不動産の一部の権利を持つ一方で、他の共有者との関係や費用負担が発生します。共有状態を続けることで負担が大きくなる場合は、共有持分の放棄を検討することも大切です。ここでは、共有持分の放棄を検討するべき代表的なケースを紹介します。

他の共有者と意見が一致しない

共有不動産の売却や活用を進めたいと思っても、他の共有者と意見が一致しなければ話し合いが進まないことがあります。

自分は売却したくても、他の共有者が住み続けたい、賃貸に出したいと考えている場合、共有状態が長引くかもしれません。今後も合意形成が難しいと考えられる場合は、共有持分の放棄を検討するべきでしょう。

他の共有者と連絡が取れない

共有者の中に連絡が取れない人がいる場合も、共有持分の扱いが難しくなります。相続を重ねた不動産では、面識のない親族が共有者になっていることもあります。共有者との連絡が難しく、今後の管理や活用に支障が出ている場合は、放棄を考えるべきといえるでしょう。

固定資産税や管理費の負担を避けたい

共有持分を持っていると、不動産を実際に使っていなくても、固定資産税や管理費、修繕費などを負担しなければいけません。今後も利用する予定がなく、収益も見込めない場合は、共有持分を放棄することで負担を避けられる可能性があります。

共有持分の放棄が「早い者勝ち」と言われる理由

共有持分の放棄が「早い者勝ち」と言われるのは、最後の共有者になると持分を放棄できなくなるのが理由です。共有持分を放棄すると、その持分は他の共有者に帰属します。

しかし、共有者が自分ひとりだけになった場合、持分を引き受ける他の共有者がいなくなるため、共有持分の放棄はできません。複数人で共有している不動産について、他の共有者が先に持分を放棄すると、その持分は残った共有者に移ります。その結果、自分の持分割合が増えてしまい、最終的に単独所有者になる可能性があります。

単独所有者になると、共有持分ではなく不動産全体の所有者になるため、持分放棄という方法は使えません。固定資産税や管理費、修繕費なども自分が負担する必要があります。

そのため、共有持分の放棄は「誰かが先に放棄すると残された共有者の負担が増える」という意味で、早い者勝ちと言われることがあります。しかし、放棄には登記手続きや税金の問題も関係するため、慌てて判断するのではなく、放棄後の影響を確認した上で進めることが大切です。

共有持分を放棄するメリット

共有持分を放棄すると、共有不動産の権利を手放すことになります。売却のように現金化はできませんが、共有関係から離れたい場合や、管理・費用負担を避けたい場合には効果的な選択肢になることがあります。ここでは、共有持分を放棄するメリットについて紹介します。

他の財産を放棄する必要がない

共有持分の放棄は、相続放棄とは異なり、特定の共有持分だけを手放せる点が特徴です。相続放棄をすると、預貯金や有価証券など他の相続財産も含めて放棄することになります。

一方で、共有持分の放棄であれば、不要な共有持分だけを手放し、他の財産はそのまま保有できます。共有不動産の管理や費用負担だけを避けたい場合におすすめの方法です。

自分単独でも放棄の意思表示ができる

共有持分の放棄は、自分の意思で行うことができます。他の共有者から許可を得なければ意思表示ができないわけではありません。

そのため、共有者同士で意見が合わない場合でも、自分の持分を手放す意思を示すことは可能です。しかし、登記手続きには共有者の協力が必要になるため、放棄の意思表示だけで完了するわけではありません。

手続きが比較的簡単でスピーディーに進められる

共有持分の放棄は、売却のように買い手を探す必要がありません。そのため、共有者の協力が得られる場合は、比較的スムーズに手続きを進められます。

共有持分は通常の不動産に比べて買い手が見つかりにくいです。売却や贈与が難しい場合でも、共有状態から抜けられる手段として放棄を利用するメリットはあるといえるでしょう。

共有持分を放棄するデメリット

共有持分の放棄には、共有関係から離れられる可能性がある一方で、注意すべきデメリットもあります。ここでは、共有持分を放棄するデメリットを詳しく解説します。

共有者の協力がなければ登記手続きができない

共有持分の放棄は、自分の意思表示だけで行えます。しかし、放棄した持分を他の共有者へ移す登記手続きには、他の共有者の協力が必要です。共有者が登記に協力してくれない場合、名義変更が進まず、登記上は共有持分が残ったままになります。その場合は、登記引取請求訴訟のような対応が必要になるかもしれません。

最後の1人になると放棄ができない

共有持分の放棄は、他に共有者がいることを前提とした方法です。放棄した持分は他の共有者に帰属するため、共有者が自分ひとりになった場合は放棄できません。他の共有者が先に持分を放棄すると、自分の持分割合が増えることがあります。最終的に単独所有者になると、不動産全体の管理や費用負担を引き受けることになります。

共有持分を現金化できない

共有持分を放棄しても、売却代金を受け取ることはできません。売却であれば持分を現金化できますが、放棄は権利を手放す行為であり、対価を得る手続きではありません。少しでも金銭を得たい場合は、放棄ではなく売却できるか確認する必要があります。共有持分専門の不動産会社に相談すれば、買い取りが可能な場合もあります。

放棄した年の固定資産税を全額負担する必要がある

固定資産税は、原則としてその年の1月1日時点の所有者に課税されます。そのため、年の途中で共有持分を放棄しても、その年の固定資産税を負担する必要があります。放棄したからといって、すぐにすべての費用負担がなくなるわけではありません。固定資産税が発生する時期や金額は、事前に確認しておきましょう。

共有者に贈与税が課税されてしまう

共有持分を放棄すると、その持分は他の共有者に帰属します。その結果、他の共有者が利益を受けたものとして、贈与税が課税される可能性があります。放棄する本人だけでなく、持分を受ける側にも税負担が生じる場合がある点には注意が必要です。共有者との関係を悪化させないためにも、放棄前に税金の影響を確認しておきましょう。

共有持分を放棄する流れ

共有持分を放棄する場合は、放棄の意思表示をしたうえで、登記手続きを行う必要があります。意思表示だけでは登記上の名義は変わらないため、共有者と協力して手続きを進めることが大切です。ここでは、共有持分を放棄する流れを紹介します。

1. 共有者へ放棄の意思表示をする

まずは、他の共有者に対して共有持分を放棄する意思を伝えます。共有持分の放棄は、自分の意思で行うことができます。しかし、トラブルを避けるためには、口頭だけで済ませるのではなく、書面で意思表示を残しておくと安心です。放棄日や対象となる不動産、持分割合などを明確にしておきましょう。

2. 持分放棄の登記手続きをする

共有持分を放棄した後は、放棄した持分を他の共有者へ移すための登記手続きを行います。登記をしなければ、登記簿上は放棄前の名義が残ったままになります。持分放棄の登記は、放棄する人と持分を取得する共有者が共同で申請するのが一般的です。共有者が協力してくれない場合は、手続きが進まない可能性があるため注意しましょう。

3. 登記識別情報通知書を受け取る

登記手続きが完了すると、持分を取得した共有者に登記識別情報通知書が発行されます。登記名義人になったことを示す重要な情報です。放棄した人は、登記が完了した時点で登記上も共有持分を手放した状態になります。手続き後は、登記内容に誤りがないか確認しておきましょう。

共有持分放棄にかかる費用

共有持分を放棄する際は、登記手続きに関する費用が発生します。ここでは、共有持分放棄にかかる費用について紹介するので、放棄手続きを行う前に確認しておきましょう。

登録免許税

共有持分を放棄して登記を行う際は、登録免許税がかかります。登録免許税は、不動産の固定資産税評価額をもとに計算されます。放棄する持分の評価額によって金額が変わるため、事前に固定資産評価証明書などで評価額を確認しておきましょう。

司法書士への報酬

持分放棄の登記手続きを司法書士に依頼する場合は、司法書士への報酬が発生します。費用は依頼先や手続きの内容によって異なります。共有者が複数いる場合や、必要書類の確認に手間がかかる場合は、報酬が高くなることもあります。依頼前に見積もりを取り、費用の内訳を確認しておきましょう。

必要書類の取得費用

登記手続きには、住民票や印鑑証明書、固定資産評価証明書などの書類が必要になることがあります。これらの書類を取得する際にも、数百円程度の費用がかかります。書類の種類は、不動産の状況や登記の内容によって変わる場合があります。手続きをスムーズに進めるためにも、必要書類を事前に確認しておきましょう。

放棄以外にも共有状態を解消する方法はある

共有持分の放棄は、共有状態から抜ける方法のひとつですが、必ずしも最適な方法とは限りません。放棄をすると現金化はできず、他の共有者に贈与税が発生する可能性もあります。

そのため、共有持分を手放したい場合は、放棄以外の方法もあわせて確認しておくことが大切です。主な解消方法は以下のとおりです。

共有持分を他の共有者へ売却する

他の共有者に自分の持分を買い取ってもらう方法

共有持分を第三者へ売却する

自分の持分だけを第三者に売却する方法

不動産全体を売却する

共有者全員で合意し、不動産全体を売却する方法

共有者のひとりが不動産全体を取得する

共有者のひとりが他の共有者の持分を買い取り、単独所有にする方法

共有持分を贈与する

他の共有者や親族などに、自分の持分を無償で渡す方法

土地を分筆する

土地を物理的に分け、それぞれを単独所有にする方法

共有物分割請求を行う

話し合いで解決できない場合に、共有状態の解消を求める方法

共有状態を解消する方法は複数ありますが、どの方法が合っているかは、不動産の種類や共有者との関係、現金化したいかどうかによって変わります。売却や贈与、共有者間での買い取りなども含めて、自分にとって負担の少ない方法を選ぶことが重要です。

放棄ではなく「売却」で持分を手放して解決した事例

共有持分の放棄は、登記手続きに他の共有者の協力が必要で、現金を受け取れず、持分を受け取る共有者に贈与税がかかる可能性もあります。こうした事情から放棄が向かないケースでは、自分の持分だけを「売却」して手放す方法が選ばれることもあります。ここでは、持分ガイドが実際に売却で解決した事例を2件紹介します。

連絡の取れない共有者がいて放棄の登記協力が見込めなかったケース

相続した古家付きの土地の持分をめぐり、共有者の一部と長年連絡が取れず、話し合いが一歩も進まなかった60代男性(千葉県松戸市)のケースです。建物が古く管理状態も悪いため通常の売却も難しく、将来的に弁護士を通じた手続きが必要になるのではと不安を抱えていました。

放棄という方法もありますが、放棄した持分を移す登記には連絡の取れない共有者の協力が必要で、現実には手続きが進まない状況でした。そこで、共有者全員の合意を待たず、ご本人の持分だけを売却する形で整理。相談から約2か月で解決し、売却価格は120万円でした。

事例の詳細を見る|千葉県松戸市60代男性・古家付き土地 
※掲載の金額は過去の事例であり、物件の状況・権利関係・エリア等により査定結果は異なります)

連絡の取れない共有者がいるケースでは、放棄や法的手続きに進む前に、持分売却という選択肢を検討できます。

現金化したい・元配偶者に贈与税を負わせたくなかったケース

離婚後も元夫との共有名義が続いていたマンションを整理したい40代女性(埼玉県川越市)のケースです。共有名義が残っていること自体が精神的な負担になっており、相手方とはできるだけ接触したくないという事情もありました。

放棄では現金を受け取れないうえ、持分を受け取る元配偶者に贈与税がかかる可能性があります。そこで、元配偶者と交渉することなく、ご本人の持分だけを第三者に売却する形で対応。相手方不在で進められる手続きの範囲を先に整理して提示し、相談から約3週間というスピードで解決。売却価格は180万円でした。

事例の詳細を見る|埼玉県川越市40代女性・マンション
※掲載の金額は過去の事例であり、物件の状況・権利関係・エリア等により査定結果は異なります)

「放棄では現金化できない」「相手に税負担が生じる」といった事情がある場合は、売却で手放す方法もあります。

共有持分の登記手続きに協力してもらえない時の対処法

共有持分の登記手続きに協力してもらえない時の対処法

共有持分を放棄するには、放棄の意思表示だけでなく、持分を他の共有者へ移すための登記手続きが必要です。しかし、他の共有者が登記手続きに協力してくれない場合、名義変更が進まず、登記上は共有持分が残ったままになってしまいます。

このような場合は、登記引取請求訴訟によって、他の共有者に登記手続きへの協力を求めることが可能です。ここでは、登記引取請求訴訟について解説します。

登記引取請求訴訟とは

登記引取請求訴訟とは、共有持分の放棄によって持分を取得する側に対し、登記手続きへの協力を求める訴訟です。

共有持分を放棄すると、放棄した持分は他の共有者に帰属します。しかし、登記を変更するには、放棄した人と持分を取得する共有者が共同で手続きを行う必要があります。相手が登記に協力しない場合は、登記引取請求訴訟によって登記手続きを進めるための判決を得ることが可能です。

登記引取請求訴訟の流れ

登記引取請求訴訟を行う場合は、まず共有持分を放棄した事実や、相手が登記手続きに協力していない状況を整理します。その上で訴状や証拠資料を準備し、裁判所へ提出します。

裁判で請求が認められると、判決をもとに登記手続きを進められるようになります。訴訟には時間がかかる場合があるため、事前に専門家へ相談して進めるのがおすすめです。

登記引取請求訴訟に必要な書類

登記引取請求訴訟では、共有持分の放棄を示す資料や、不動産の権利関係を確認できる書類が必要です。主な書類として、不動産の登記事項証明書、固定資産評価証明書、持分放棄の意思表示を示す書面などがあります。

また、相手に登記への協力を求めたことがわかる資料があると、状況を説明しやすくなります。必要書類は事案によって異なるため、弁護士や司法書士に確認しながら準備しましょう。

登記引取請求訴訟にかかる費用

登記引取請求訴訟には、裁判所に納める手数料や郵便切手代などがかかります。弁護士に依頼する場合は、別途弁護士費用も必要です。

費用は、不動産の評価額や依頼内容によって変わります。訴訟後には登記手続きの費用も発生するため、総額でどれくらいかかるのかを事前に確認しておくことが大切です。

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共有持分放棄に関するよくある質問

Q. 共有持分放棄の申請は法務局に行う必要がありますか?

共有持分を放棄しただけでは、登記上の名義は自動で変わりません。放棄した持分を他の共有者へ移すには、法務局で登記手続きを行う必要があります。

Q. 登記原因証明情報とは?

登記原因証明情報とは、登記を行う原因や内容を証明する書類のことです。共有持分の放棄では、いつ、誰が、どの不動産の持分を放棄したのかを示すために必要になります。

Q. 農地の共有持分でも放棄は可能ですか?

農地の共有持分でも、放棄自体は可能です。しかし、農地は通常の宅地や建物とは異なり、農地法の規制が関係する場合があります。

共有持分の放棄はデメリットや手続きを確認した上で行おう

共有持分は、自分の意思表示によって放棄することができます。しかし、デメリットや必要な手続き、費用負担なども発生するため、事前に理解した上で放棄をするべきか判断しましょう。共有者が登記手続きに協力してくれない場合は、登記引取請求訴訟を検討することになります。しかし、訴訟には手間や費用がかかるため、放棄以外の方法で共有状態を解消できないかもあわせて考えることが大切です。

担当者

株式会社CLOUD HOMe 主任

本橋 陽加里

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